7 刑事事件(被疑者・被告人、被害者参加制度)

1 刑事弁護(被疑者・被告人)


 刑事裁判では、捜査段階や起訴後における自白が事実上重視されます。普通の人が考えれば、「やって いないのなら自白しないはずだ」「嘘をついてまで犯罪を認めるひとはいない」と思われるかもしれません。


 しかし、捜査機関による取調べは極めて特異な環境で行われます。何日も逮捕・勾留され、一日に何時間 も事件のことについて質問され続けるのは、想像しているよりもはるかに精神的・肉体的に苦痛を伴います。無実の人が虚偽の自白をしてしまうこともありますし、たとえ無実ではなくとも、自分がやった犯罪行為よりも重い内容の行為を行ったとの調書が作成されることは珍しくありません。

 自分の行為よりも重い内容の犯罪行為が認定されてしまうと、本来であれば起訴猶予ですんだ事件が実刑になったり、懲役1年ですむ事件が3年、4年になったりすることもあります。


また、前科の有無や事案によっては、逮捕された場合や在宅で捜査されている場合に、早期に被害者と示談することで、起訴されずに不起訴処分となり、刑事処分を受けることなく早期に事件を終結させることもできます。そうすることで、早期の身柄解放、刑事手続からの解放が可能となり、依頼者の利益に沿った解決も可能です。


 このように、捜査段階で不利な証拠を固められてしまうと、裁判でそれを覆すことは非常に困難となります。そのような事態を未然に防ぎ、無実の罪を防ぐとともに、自分の行為に見合った適切な刑にとどめるため、できるだけ早い段階で弁護士のアドバイスを受けることをお勧め致します。



2 被害者参加制度


従来の刑事裁判では、被害者が刑事裁判に参加して被害感情を訴える場は限定的でした。証人として法廷で証言する場合や、捜査機関の調書の中で間接的に訴えるしかできないのが実情でした。


 しかし、犯罪によって最も苦しんでいるのが被害者であるにもかかわらず、裁判官がいる法廷で自分の意 見や考え、思いを吐露する場が与えられないのは不自然でした。また、被告人が「被告人質問」において反 省の情や更正の意志を法廷で述べることができるのと比較して、不公平でもありました。そこで、現行法では「被害者参加制度」が設けられ、被害者の代理人が法廷で被害者の「思い」を述べることができるようになりました。


 不運にも犯罪の被害にあわれた方々の中には、ご自身の怒りや悲しみをどこにぶつけて良いか分からず、心の整理がなかなかつかずに苦しんでいる方もおられます。そのような状況に陥ることを防ぎ、ご自身の中 で「区切り」をつけていただくためにも、刑事裁判の中で、代理人を介して、ご自身の思いを述べていただく  ことをお勧め致します。


 また、加害者から示談名目で連絡がきた場合があります。ただでさえ加害者には恐怖を抱いているのに、直接交渉などしたくないというお考えはもっともです。提示された示談金が妥当な額かという疑問もあると思います。このような場合に、弁護士を代理人にして交渉することで、一定程度の被害回復を図ることもできますし、直接交渉を避けることもできます。


 犯罪被害者の方々のお気持ちを刑事手続に反映させたり、被害者の方々の被害回復、二次被害、三次被害の防止のため、弁護士に相談することをお勧め致します。