3 相続・財産管理(遺言・遺産分割、成年後見等)

相続手続は、相続財産の確認・評価、相続人の確定、遺産分割協議書の作成、遺産分割の執行など複雑な手続をする必要があります。


そして、遺産分割は、①遺産分割協議(相続人間の話し合い)、②遺産分割調停・審判(調停員や裁判官と相続人の三者間による話し合い)、③遺産分割訴訟(裁判官による審理・判断)の3つの方法があります。

時間的・経済的な負担は①が最も少なく、③が最も大きくなります。②は両者の中間に位置しますが、どちらかと言えば③の前段階といった位置づけになります。

遺産分割は、離婚問題と同様、家族間の問題であり、感情的な対立に陥りやすく、長期化・複雑化する傾向があります。当事者間では感情的になってしまう場合でも、第三者である弁護士が仲介人として交渉したり、協議に加わることで、より円滑に解決する場合もあります。紛争の早期解決、紛争の長期化・複雑化の防止のため、お気軽にご相談ください。

以下では、遺産分割について遺言書がある場合と遺言書がない場合のご説明いたします。そして、最後に、遺言の作成についてご説明いたします

遺産分割

1 遺言書がない場合


遺言書がない場合には、相続人の話し合いにより遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議では、相続人間の紛争を防止するため、第三者である弁護士を仲介人として話し合うこともできます。

また、すでに相続人間の話し合いができない場合でも、弁護士が訴訟になった場合の遺産分配の見通しや、訴訟になった場合の時間的・経済的なデメリットを具体的に提示して話し合いを促すことで協議が円滑に進むこともあります。

紛争の早期解決、紛争の長期化・複雑化の防止のため、お気軽にご相談ください。

以下では、遺言書がない場合の遺産分割協議、調停・審判についてご説明いたします。

(1)相続財産の確認及び遺産目録の作成

まず、どのような相続財産があるのかを確定し、遺産の目録を作成する必要があります。

当事務所では、不動産登記簿謄本、固定資産評価証明書、預金通帳、有価証券、借地借家にかかる契約書、金銭消費貸借契約書その他の資料を取り寄せるなどして調査を行い、遺産目録を作成します。

(2)相続人の確認

次に、相続人を確定する必要があります。

相続人の確定手続は、被相続人が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍(除籍、改正原戸籍)と、相続人全員の戸籍の付票または住民票を取り寄せなければなりません。当事務所では、相続人の方に代わってこれを行います。

(3)遺産の評価

不動産については、公示価格、路線価、固定資産評価をもとに、適切な評価を行います。

遺産の評価は専門的な知識を要しますが、相続人全員の納得という観点から、できる限り時価にそった価格とすることをおすすめいたします。

(4)遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成

すべての相続人で遺産分割協議を行い、全員の合意が得られれば、遺産分割協議書を作成いたします。

相続人全員が納得できるように、遺産分割協議書の内容について誠心誠意ご説明いたします。

訴訟や調停・審判となった場合の見通し、つまり遺産の範囲、遺産の分配の割合・評価、相続人各人の特別受益(生前に故人から贈与等を受けたか)、寄与分(生前に故人じ貢献したか)をご説明することで、訴訟等になった場合のメリット・デメリットを把握した上で協議することができます。そうすることで、より遺産分割協議が円滑に進むことが期待できます。

(5)遺産分割調停・審判

遺産分割協議が合意に至らなかった場合には、遺産分割調停を申立てます。

遺産分割調停では、調停員や裁判官と当事者の3者間で話し合いが行われます。具体的には、遺産の範囲、遺産の分配の割合・評価、相続人各人の特別受益(生前に故人から贈与等を受けたか)、寄与分(生前に故人じ貢献したか)について、調停員や裁判官により客観的な判断をしてもらうことになります。

また、調停が不成立に終わった場合には、審判手続に移行します。遺産分割審判では、調停と異なり、審判官(裁判官)によって、より訴訟に近い形で判断が行われます。

(6)遺産分割訴訟

調停・審判に不服がある場合には、訴訟を提起することができます。

これは、民事訴訟という厳格な手続により審理がなされ、判決によって判断が下されます。当然、裁判官が公正な立場で判断します。しかし、時間的・経済的費用はかなり大きなものとなります。

また、遺産を無断で私的に流用した場合などには、遺産分割訴訟とは別に、不当利得返還請求をすることができます。これは民事訴訟の一つであり、訴訟を提起する必要があります。

 (7)遺産分割の執行

遺産分割について合意ができた場合には遺産分割協議書にそって遺産の分配を行います。

また、遺産分割調停・審判、遺産分割訴訟になった場合には、その判断にそって遺産の分配を行います。


2 遺言書がある場合


)遺留分減殺請求

兄弟姉妹とその子供以外の相続人は、遺留分減殺請求ができます。

遺留分とは、法定相続分に応じて遺産から受ける予定の財産の半分です。

例)遺産が600万円、自分の法定相続分がその4分の1の場合

  600万円×1/4=150万円(法定相続分)

  150万円×1/2=75万円(遺留分)

この遺留分より少ない財産しか得られなかった場合または全く財産が得られなかった場合には、遺言により遺留分が減殺されていることになりますので、75万円から減額された分を請求することができます(全く財産を得ることができない場合は75万円満額)。

ただし、生前に故人を虐待したとか遺棄したといった事柄がある場合には、相続人から廃除され、遺留分減殺請求ができない場合もあります。これは、事案によって判断が分かれますので、詳しくは弁護士にご相談ください。

また、遺留分減殺請求権の行使期間には制限がありますので、遺言があることがわかったら早めにご相談ください。

)遺言無効確認の訴え

遺言書がある場合でも、相続人が作成したものではない場合や、遺言者の意思能力がない状態で作成された場合には、遺言が無効となります。この場合は、遺言無効確認の訴えを提起します。

遺言の作成

遺言は、被相続人(遺言者)の意思に基づいて相続財産を分配するものです。

これは、遺産は元々被相続人の財産なのですから、遺産分割においては被相続人の意思を反映させるのは当然です。

加えて、遺言により、相続人間の紛争を未然に防止できる効果があります。

最近では「終活」という言葉が話題に上ります。相続人が遺産によって紛争となり、家族が仲違いしてしまうケースが多いのですが、そのような事態を未然に防止するためにも、遺言の作成をおすすめいたします。

また、遺言書を作成しただけでは、その内容通りに遺言書が執行されるか分かりません。紛失してしまったり、その存在が不明になったりするケースがあるからです。

そういったことを防止するために、遺言作成した場合には、遺言執行者として弁護士に委任することが有効です。

当事務所では、遺言の作成及び遺言の執行業務について、極めて安価で承っております。是非、ご検討ください。


1 遺言書の種類

(1)自筆証書遺言

遺言者が、遺言書の内容、日付、氏名を自筆で作成した上で押印します(実印でなくてもかまいません)。

遺言書は要式が法定されており、その要式を書く場合は無効となる場合があります。裁判所では善意解釈する運用となっていますが、紛争の種を残さないためにも、弁護士にご相談ください。

(2)公正証書遺言

2人以上の証人の立ち会いのもとで、遺言者が遺言の内容を口授し、公証人がこれを筆記し、遺言者らが署名・押印することで成立します。

公証人が遺言作成に立ち会うので、遺言書の成立について後日に紛争になることはあまりありません。相続人間の紛争防止に有効ですので、遺言を作成する場合には、公正証書遺言をおすすめいたします。

その作成方法や手続につきましては、当事務所で代理いたしますので、お気軽にご相談ください。

(3)秘密証書遺言

遺言者があらかじめ遺言書を作成し、署名・押印した上、封印をし、2人以上の証人に立ち会いのもとで申述し、公証人が作成日付等を確認することで成立します。

遺言者があらかじめ遺言書を作成して封印しますので、公証人や証人に遺言書の内容を知られることはありません。遺言者が遺言内容を秘密にしておきたい場合に作成します。その他の点は公正証書遺言と同様です。

(4)一般危急時遺言等特別方式による遺言

一般危急時遺言とは、遺言者に死亡の危急が迫っている場合、3人以上の証人の立ち会いのもと、その1人に遺言を口授して、その証人がこれを筆記し、各証人が署名・押印することで成立します。

これは、遺言者が上記の遺言書作成の手続をすることができない場合に行います。証人は医師がなることもあります。

この場合、遺言の日から20日以内に裁判所における確認の手続をする必要があります。

2 遺言書作成の流れ

(1)相続財産の範囲及び相続人等の範囲の確定

遺言作成のためには、まず、相続財産の範囲を確定しなければなりません。そのため、被相続人の相続財産、財産関係を調査する必要があります。

具体的には、不動産登記簿謄本、固定資産評価証明書、預金通帳、有価証券、借地借家にかかる契約書、金銭消費貸借契約書等、遺言作成に必要な資料をご持参いただくか、当事務所で取り寄せいたします。

また、相続人の範囲を確定する必要があります。そのため、被相続人や相続人の戸籍、住民票等をご持参いただくか、当事務所で取り寄せます。

さらに、遺言によって遺贈(相続開始と同時に遺産から贈与すること、相続人以外に対しても可能)などをす場合には、受遺者(遺贈を受ける者)の特定のための資料をご持参いただくか、当事務所で取り寄せます。

(2)遺言書の内容についての協議

遺言者の意向にそった形で遺言書案を作成し、遺言者に確認していただいて同意を得れば、自裁の遺言書を作成いたします。

(3)公正証書遺言等の作成の立ち会い


公正証書遺言や秘密証書遺言など、公証人等との手続が必要な場合は、必要となる資料や書面を準備し、遺言者の意思通りの内容となるように遺言作成に立ち会います。

成年後見

「成年後見」とは、認知症等により判断能力が低下してきた方々の財産を保護するための制度です。


成年後見が必要になるケースは、主に、以下の2つになります。


① 詐欺的な取引から保護する必要がある場合

② 一部の親族による財産の私的な使い込みの疑いがある場合


以下、2つの事例についてご説明致します。



1 詐欺的な取引から保護する必要がある場合


具体的には、認知症等により判断能力が低下してしまい、訪問販売等によって不当な契約を締結してしまった場合でも、成年後見人がついていればすぐに取り消すことができます。


また、自己の財産、特に居住用財産を他人にあげてしまったり、極めて安い価格で処分してしまったりした場合にも、成年後見人がついていればすぐに取り消すことができます。


このように、ご自身で自分の財産を守れなくなった場合に、「成年後見人」が代わりに財産を管理し、悪徳業者等による詐欺的な取引からご本人を守る制度が、「成年後見制度」です。


最近財産管理に不安がでてきた方々、そしてご自身のご両親や祖父母が認知症の疑いがあるものの、遠方に住んでいたり忙しくて同居したり財産管理をしてあげることができない場合などには、成年後見人をつけて財産を保護することをお勧めします。



2 一部の親族による財産の私的な使い込みの疑いがある場合



他方、成年後見人が必要となる事例には、一部の親族が高齢者等の財産を私的に使い込んでしまっているケースもあります(もちろん、ご本人の介護費用、生活費用といった高齢者等の方々のために使用している場合は別です)。

これは、他の親族が見つけたり、介護士、ケースワーカーなどの方々が不審に思って相談して発覚することが多いです。


この場合には、一概には言えませんが、その後の遺産分割で揉めることが多いです。


なぜなら、一部の親族がご両親の預貯金等の財産を私的に使用して相続財産が減少している場合には、他の相続人が受けとる遺産が少なくなってしまうからです。


遺産分割では、相続人の一部が私的に使い込んだ場合には、使い込んだ分は「遺産の先取り」がなされたものとして、その分相続できる財産を減らすことができます。

しかし、それには使い込んだ分を特定しなければなりません。当然、当事者同士の話合いではまとまらず、調停・審判が無駄に長期化したり、遺産分割とは別の民事訴訟という段階にまで発展するケースもあります。


このようなことを未然に防ぐ方法として、一部の親族による財産の使い込みが疑われる場合には、弁護士等の専門職による成年後見人をつけて財産を保護することは極めて有効です。



以上のように、財産管理に不安がある方々、そして認知症等の疑いがあるご両親又は親族がいらっしゃる方々は、一度、成年後見制度の利用(=「成年後見申立て」)を検討されてはいかがでしょうか。